朱色の塗り椀が特徴的な紀州漆器
木地師によって作られた「渋地椀」と岩出根来の「根来塗」が組み合わさってできた「紀州漆器」は海南市黒江地区を中心に発展し、生産されています。
独特な朱色が特徴的な紀州漆器
紀州漆器とは、和歌山県海南市の北西部にある「黒江地区」を中心とした地域で生産されている漆器です。福島県の会津塗、石川県の山中塗・輪島塗と並んで、日本三大漆器の一つに称されています。
漆器に使われる材料は、木や樹脂(プラスチック)です。一般的に木製品は工程に非常に手間がかかるため高価で、機械生産できる樹脂製品は比較的安価に購入できます。漆器には、漆 を使ったもの(漆塗)とカシュー塗料(合成漆塗)がありますが、漆はとても貴重(アジア地域でしか採れない)な材料で、カシュー塗料を使ったものの方が金額も安くなります。そのため今日では合成漆塗のものがほとんどになっています。漆とは?
ウルシの木の樹液が原料であり、樹を刃物で傷つけて採取しています。この樹液(生漆)を丁寧に採取した後に樹の皮や木屑などを取り除き、撹拌することで粒子を均一化させて艶を出し、水分を抜くことで粘度や乾きの調整を行い、透明な茶褐色の「精製透漆(せいせいすきうるし)」を作ります。
黒の漆を作る時だけは特殊で、撹拌する際に鉄粉または水酸化鉄を混ぜて化学反応をさせる事で黒く変化させています。黒以外の色は精製透漆に顔料を加えて作っています。
昔は日本にも漆の木が多くありましたが、今では日本産の漆はとても貴重なものとなっています。国産の漆の生産は岩手県が3/4を占めていますが、国内で使用する量の約5%ほどしか賄えていません。そのためほとんどは中国からの輸入に頼っています。なお、樹齢15年~20年の漆の木から採取できる生漆の量は約200g程度と言われており、漆はとても貴重なものです。起源
室町時代に紀州木地師によって作られた渋地椀が始まりであると言われています。また現在の岩出市にある根来寺で僧侶たちが寺用の什器を自ら作ったことも起源とされています。根来寺に始まったこれらの塗り物がいわゆる「根来塗」と言われるものです。
根来塗の特徴
黒漆で下塗りをし、その上に朱漆を塗ったシンプルなものが根来塗の基本です。昔は漆器を作るには未熟な技能しか持たない僧侶が作っていた実用品であり、また貴重な朱色の顔料である「
辰砂 」を一度塗りにしているため、使っているうちに自然と表面の朱漆が磨滅してしまい、下塗りの黒漆がところどころ露出するしてきました。これがかえって趣のある事として喜ばれました。この黒漆の見え方は「どう使ったのか」「どのように塗ったのか」「どこに置いていたのか」によって朱漆の剥がれ方が変わってくるので、1つとして同じものができません。この違いが根来塗の美しさと言えるでしょう。
根来塗が紀州漆器の基になったのは、豊臣秀吉が紀州攻めをしたときに難を逃れた根来寺の僧侶が、その技術を持って海南市で漆工に従事したことが始まりだそうです。同時に全国に根来寺の僧侶が逃げ延びた事により、各地に漆塗りの技術を伝えたとも言われています。発展した紀州漆器
江戸時代中期になると、紀州藩の保護のもとに盛大に発展した紀州漆器は1800年代中ごろに
蒔絵 による加飾がされるようになり、その美しさにより外国人が購入するため長崎や神戸の外商へ直売するようになりました。明治時代になると紀州藩の保護が無くなり衰退するかと見えたのですが、沈金彫の技術の導入や蒔絵の改良を行ったこともあって昭和24年には「重要漆工業団地」として国の指定を受ました。昭和53年には「伝統的工芸品」としての指定を受けるなど、和歌山を代表する伝統産業として発展を期していました。これからの紀州漆器
しかしながら消費者のライフスタイルの変化や外国産の安い什器の輸入により、漆器の需要は減少してきています。また、職人の高齢化も深刻化しており、若い技術者の育成が課題とされています。
そのため新しいスタイルの紀州漆器が求められています。角田清兵衛商店さんはその中でも天然木を使った新しいスタイルの什器を製造しています。
漆器の取り扱い方
丈夫で耐久性に優れた漆器ですが、取り扱い方を間違うと傷みも早くなるので注意が必要です。
漆器が嫌うもの
- 紫外線(直射日光)
- 乾燥したところ
- 乾いた熱(ストーブの横など)
- 湯水に長時間浸す
- 湿度・温度が極端に高い所
- 食器(洗い)乾燥機・電子レンジ・オーブン:一部の樹脂材料の合成漆器の場合は食器乾燥機は可
日常のお手入れ方法
- 使用後はすぐに汚れを洗い落とす
- 湯水に長時間漬けない
- 水気は完全に取る
- 洗剤やナイロンたわしを使わない
- 傷をつけない
- カラ拭きをする
アクセスについて
紀州漆器伝統産業会館「うるわし館」までは、JR海南駅から徒歩で約20分(1.5km)、JR黒江駅から徒歩約16分(1.2km)です。タクシーだとワンメーターぐらいで行ける距離ですが、黒江駅は小さな駅のためタクシー乗り場がありませんのでご注意ください。
黒江の街並みは昔ながらの雰囲気を残しているので必見ですよ!のんびりと散策がてらに歩いてみるのもいかがでしょうか?
メイン通りから外れたところは昔の街並みなので、道が非常に狭くて車が通行できないところも多くありますのでご注意ください。また住居を兼ねている街並みなので迷惑にならないようにご注意ください。
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